最終更新日:2021年5月07日
緑内障の進行を予防するには、日常の食生活に「目に良い栄養」を取り入れることも大切です。ここでは、目の健康維持に効果的だといわれている「DHA」「EPA」という成分をご紹介します。
DHAやEPAは、体内では十分に合成することができない「必須脂肪酸」の1つです。
DHA(ドコサヘキサエン酸)は、人間の脳や目の網膜に多く存在しています。また、脳の中で直接栄養素として機能するという特徴を持ち、脳細胞の健康や視力を維持するために重要な役割を果たすといわれています。
一方、EPA(エイコサペンタエン酸)※は、血液の粘度を下げてサラサラにしたり、中性脂肪の値を下げたりする効果があるとされています。生活習慣病に対する改善作用が期待できることから、DHAとともに積極的に摂取することを推奨されている栄養素です。
※EPAは、IPA(イコサペンタエン酸)と呼ばれることもあります。
緑内障は、眼圧が高まることで視神経周辺の血流が滞り、目の機能が損なわれる病気です。そのため、薬物によって眼圧を下げる治療と並行して、目に栄養を補給したり、血流を改善したりすることが推奨されています。
そして、DHAやEPAには、血中の中性脂肪や悪玉コレステロールを減らして血管の健康を維持したり、血の流れをスムーズにしたりする効果があるといわれています。実際に、「15名の人にDHAを継続的に摂取してもらったところ、15名中10名に視力の改善がみられた」という実験結果も。
米国・UCLAデイビッド・ゲフィン医科大学院の研究グループは、DHAやEPAを含む多価不飽和脂肪酸の1日ごとの摂取量と、緑内障の罹患リスクとの関連性を調査する研究を行いました。その結果、「多価不飽和脂肪酸の中でも、DHAとEPAの摂取量が多いほど、緑内障の罹患リスクが低い」ことが明らかになったということです。
「緑内障から目を守る」編集部は緑内障患者100名へアンケートを実施。直近1年間の視野欠損の進行を抑制している人が、最も目に良い成分として認知しているのがアントシアニンだと分かりました。
(※2020年3月に株式会社アスマークにてインターネット調査)
DHAやEPAには、ドライアイを予防・改善する効果があると考えられています。
例えば、「ドライアイの症状を持つ64名の人を2つのグループに分け、一方にはDHAやEPAのようなn-3系脂肪酸を、もう一方にはプラセボを30日間連続投与した」という実験があります。この実験では、n-3系脂肪酸を投与したグループのみに、涙の分泌量の増加や蒸発量の低下といったドライアイの改善効果が見られました。
このような効果を発揮するメカニズムは、「乾燥によって生じる目の粘膜の炎症を抑え、傷んだ角膜の再生を助ける」というものではないかと考えられています。食事やサプリメントでDHAやEPAをしっかりと摂取することにより、目のうるおいを維持する効果が期待できるでしょう。
※参考:
Short-term consumption of oral omega-3 and dry eye syndrome
Docosahexaenoic Acid, Protectins and Dry Eye
青魚の中でも、サンマはとりわけ豊富なDHA・EPAを含んでいます。可食部100gあたりの含有量の目安は、DHA1600mg、EPA850mg。旬を迎え、入手もしやすくなる秋の時期には、ぜひ積極的に食卓に並べたい食材です。
DHAやEPAが豊富な脂ののったサンマを見分けるコツは、背中の部分が盛り上がっており、体にふっくらと厚みがあるものを選ぶこと。DHAやEPAの酸化を防ぐため、調理の際の処理を手早く行うこと、買ったその日のうちに食べることを心掛けるとよいでしょう。
身近な魚であるサバにも、DHAやEPAが豊富です。その含有量の目安は、マサバの場合で100gにつきDHA970mg、EPA690mg。また、通年味が安定しているのが特徴のゴマサバの場合は、100gにつきDHA830mg、EPA230mgが含まれています。
「青魚が苦手」「調理が面倒」といった場合には、入手しやすく、かつ食べやすいサバ缶を活用するのもよい方法です。生のサバに比べてさまざまな料理にアレンジしやすく、長期保存も効くため、備蓄を兼ねて常備しておくとよいでしょう。缶汁にもDHA・EPAが含まれているため、汁ごと食べられるような方法で食べるのがおすすめです。
イワシ類の中でも流通量の多いマイワシの可食部100g中には、870mgのDHAと、780mgのEPAが含まれています。2つの成分がバランスよく含まれているほか、疲れ目に効果的といわれるビタミンB2を豊富に含んでいる点もポイントです。
また、サバなどと同じく缶詰での入手がしやすい点も、イワシの特徴の1つ。サバとは異なり、かば焼きや梅煮、オイルサーディンといったさまざまなバリエーションの缶詰が出回っているため、飽きずに楽しむことができるでしょう。
アジのDHA・EPA含有量の目安は、100gあたりDHA570mg、EPA300mgです。旬である夏はもちろん、1年を通じて流通しているため、季節を問わず食べられるのがポイント。また、同じ青魚の仲間であるサンマやサバに比べ、目や肝臓の機能改善に効果的といわれるタウリンが豊富であるという特徴もあります。
新鮮なアジが手に入ったら、刺身やなめろうにして生で食べるのがおすすめ。熱を加えないことで脂の流出を防ぎ、DHAやEPAを効率よく摂取することができます。
日本人にとってなじみの深いマグロも、DHAやEPAを比較的多く含む食材です。含有量の目安は、クロマグロの赤身の場合でDHA120mg、EPA27mg。ただし、同じクロマグロでも脂身(トロ)の場合は値が大きく上がり、100gにつきDHA3200mg、EPA1400mgと、非常に多くの含有量を誇ります。お寿司屋さんに足を運んだ際には、ぜひ注文してみてはいかがでしょうか。
より日常生活に取り入れやすい選択肢としては、まぐろ類の魚を原材料とするツナ缶もおすすめです。ツナ缶の原料にはキハダマグロやビンナガマグロ、カツオが多く用いられますが、この中ではビンナガマグロが最もDHA・EPAを豊富に含んでいます。ツナ缶を購入する際は、原料欄にビンナガマグロ(ホワイトミート)と書かれたものを選ぶとよいでしょう。
1年を通して安価に購入できるサケにもDHAやEPAが豊富に含まれています。サケと言っても、シロサケやギンザケ、キングサーモンなどさまざまな種類があります。一般的にサケと呼ばれる「シロサケ」の焼いた物100gあたりの含有量の目安はDHA510mg、EPA260mg。
9月から11月にかけて旬だと言われており、脂がのり、一番美味しく食べられます。DHAやEPAをしっかり摂取したい場合、刺身や寿司など生の状態で食べるのがおすすめです。
加熱し過ぎるとDHAやEPAがどんどん流れ出てしまうため、調理する時は、ホイル焼きにしたり、フライにする場合は揚げすぎないようにしたりする工夫が必要です。サケにはビタミンB群やビタミンDなど健やかな毎日を過ごすために必要な栄養素が豊富に含まれているため、積極的に取り入れるとよいでしょう。
マダイは淡白で脂質が少なく、クセがないため幅広い世代の方に好まれている魚です。マダイにも、DHAやEPAが豊富に含有されていることで知られています。マダイ100gあたりの含有量の目安はDHA297mg、EPA157mg。
マダイの頭や骨に多く含まれていますので、かぶと煮にしたり、あら煮にしたりして摂取するとよいでしょう。刺身や寿司にしてもDHAやEPAをしっかり摂取できるのでおすすめです。
※参考:えひめの鯛
ブリは成長していくとともに名前が変わるため、「出世魚」として知られており、進学や就職などおめでたいことがある時に食べる風習があります。ブリは脂がのって食べ応えがあり、さまざまな調理法で楽しむことが可能です。
そんなブリ100gあたりの含有量の目安はDHA1785mg、EPA898mgと、非常に豊富に含まれているのも特徴の1つ。DHAやEPAを効率よく摂取したい場合、刺身や寿司にして食べるのがおすすめです。新鮮なブリが手に入った場合、ぜひ生で楽しんでみましょう。刺身にする場合は、その日のうちに召し上がってください。
その他には、ブリの照り焼きやブリ大根などにして摂取するのもよいです。ブリ大根の場合、味付けを薄めにしておけば煮汁ごと食べられますので、溶け出たDHAやEPAも一緒に摂取できます。
カレイはあっさりとしていてクセがなく、刺身やから揚げなどさまざまな調理法で楽しめる魚です。カレイ100gあたりの含有量の目安はDHA202mg、EPA210mg。カレイはさまざまな種類がありますが、スーパーでよく見かけるのがマガレイと呼ばれるものです。1年を通して入手できますが、秋から冬にかけて旬を迎えるため、これからの季節、美味しいカレイを購入しやすくなります。
DHAやEPAを効率よく摂取するには、刺身で食べるのが最適です。カレイの煮付けは、味付けを薄めにすれば煮汁に溶け出ているDHAやEPAも一緒に摂ることができます。
※参考:千葉県「鈴木たね子先生 講演4」
ウナギのかば焼きには、DHAやEPAが豊富に含有されています。ウナギ100gあたりの含有量の目安は、DHA1332mg、EPA742mg。加工しても、DHAやEPAは酸化されにくいと言われているため、缶詰の蒲焼きを取り入れるのもおすすめです。
ウナギのかば焼きにはビタミンAやビタミンDなどの栄養素も豊富に含まれていて、栄養価が高い食品の1つといえます。ウナギのかば焼きは下ごしらえからかば焼きにするまで非常に手間がかかる料理なので、外食した際に召し上がるのがよいかもしれません。
※参考:京都府漁業協同組合
魚以外の食材にも、DHAやEPAは含まれています。しかし、結論から言えば「食事からDHAやEPAを摂るなら、青魚を食べるのが最も効率が良い」と言えるでしょう。
DHAやEPAを比較的多く含む魚以外の食材としては、豚肩肉や鶏卵が挙げられます。ただし、豚肩肉のDHA含有量は100gにつき67mg、EPAの含有量は0mgです。鶏卵の場合も、100gあたりの含有量はDHAは0mg、EPA120mg。サンマやサバなどの魚に比べると、見劣りすると言わざるを得ません。
また、野菜や果物、油脂類、乳製品、豆やきのこといった魚以外の食材の多くは、DHAやEPAをほとんど含んでいません。DHAやEPAを摂取したい場合は、日々の献立に意識的に魚を、とりわけ青魚を取り入れるのがおすすめです。
※参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂) 脂肪酸成分表編
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、DHAやEPA、α-リノレン酸などを含むn-3系脂肪酸全体の摂取目安量が提示されています。その量は、18~49歳の男性で1日2.0g。同じく18~49歳の女性では、1日あたり1.6gが摂取量の目安とされています。
DHAやEPAは健康によい作用をもたらしてくれる成分ですが、いくらでも摂ってよいというわけではありません。DHAやEPAを過剰に摂取すると、何らかの要因で出血した際に血液が固まりにくくなってしまうことも。手術などの出血を伴う治療を控えている人や、高血圧などの持病がある人は、とくに注意しましょう。
米国食品医薬品局によれば、1日3g程度まではDHA・EPAを摂取しても問題ないとされています。通常の食生活においてDHA・EPAを摂りすぎる心配はあまりありませんが、「サプリメントの用法用量を守らない」「サプリメントを摂取したうえで、DHAやEPAを多く含む食品を多量に食べる」といった行為には注意が必要です。
DHAやEPAに限らず、基本的に栄養は食事から摂るのが理想とされています。しかし、食の嗜好や生活習慣などの事情から、継続的にDHAやEPAを含む食品を食べることが難しい人もいるでしょう。そのような場合は、サプリメントを活用するのも1つの手です。
一般的な食品とは異なり、サプリメントには「調理や保存のための手間がかからない」というメリットがあります。また、DHA・EPAをどの程度摂取したかがはっきりと分かる点も、サプリメントならではの利点であるといえるでしょう。
目や体の健康を守るためには、さまざまな栄養をバランスよく摂取することが大切です。サプリを上手に活用して足りない栄養を補いつつ、健やかな体を育みましょう。