最終更新日:2021年5月07日
緑内障のケアに効果が期待できる食品の1つとして、カシスが挙げられます。目の健康をサポートするカシスについて詳しくみていきましょう。
カシスは、別名クロスグリともいわれる果実です。ニュージーランドや北欧、カナダ、日本などが主な原産国とされています。国内では青森県で栽培が盛んです。
赤黒い果実でブルーベリーによく似ていますが、種類的には全くの別物。甘酸っぱさとえぐみがあるため、生食することはあまりありません。
カシスは、他のベリー類と同様に豊富なアントシアニンを含んでいるのが特徴です。
アントシアニンには化学構造の違いでいくつかの種類があり、カシスには、「デルフィニジン-3-ルチノシド」「シアニジン-3-ルチノシド」「デルフィニジン-3-グルコシド」「シアニジン-3-グルコシド」という4種類のアントシアニンが含まれ、まとめて「カシスアントシアニン」とよばれています。
「緑内障から目を守る」編集部は緑内障患者100名へアンケートを実施。直近1年間の視野欠損の進行を抑制している人が、最も目に良い成分として認知しているのがアントシアニンだと分かりました。(※2020年3月に株式会社アスマークにてインターネット調査)
(※2020年3月に株式会社アスマークにてインターネット調査)
ニュージーランド産カシスアントシアニンの抗酸化力測定を行ったところ、食品の抗酸化力を表すORAC値は100μmolTE/g程という結果になりました。
この数値は、アントシアニンを多く含む食品として親しまれているブルーベリーの61.8μmolTE/gを上回る数値であり、カシスアントシアニンの抗酸化力が高いことが証明されたといえるでしょう。
国内で行われた臨床試験によると、カシスアントシアニンが眼圧の上昇やそれに伴う視野狭窄の進行を抑制する可能性があることが明らかになりました。
この臨床試験は、緑内障の治療を受けている人に対し、カシスアントシアニン50mgを2年間摂取してもらい、何も摂取していない群との比較をしたものです。
カシスアントシアニンを摂取した群では、目の血流改善や視野狭窄の進行抑制が確認されました。
さらに、正常眼圧の人の場合には、カシスアントシアニンの摂取によって眼圧の低下、緑内障の人の場合には、眼圧の上昇抑制が確認されたようです。
カシスアントシアニンは吸収が早いという特徴があります。個人差などもありますが、摂取後15分程で血中濃度が上昇し、血流の改善がみられ始めるようです。1~2時間でカシスアントシアニンの血中濃度が最も高くなり、以降徐々に低下するも8時間後にも血中に残っていることもわかっています。
パソコン作業やスマートフォン操作など、手元を凝視していたあとに、ふと遠くを見ると、ピントが合わず視界がぼやけることがあります。これは「ピントフリーズ現象」とよばれるものです。目のレンズである水晶体を調節する毛様体筋という筋肉が固まってしまうことが原因とされています。
このピントフリーズ現象に対するカシスアントシアニンの効果を検証した臨床試験によると、カシスアントシアニンを摂取した群では2時間のパソコン作業という負荷を与えても屈折値の低下はみられず、摂取しなかった群では屈折値の大幅な低下がみられたそうです。
この結果は、カシスアントシアニンの摂取により、ピントフリーズ現象が抑制されたということを示しています。
カシスアントシアニンが毛様体筋が固まる=目のコリを緩和することによって、ピントフリーズ現象を抑制することが明らかになっていますが、この作用を証明するために行われた実験があります。
ウシ由来の毛様体筋にカシス特有のアントシアニンである、シアニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ルチノシドを添加することで、毛様体筋の収縮が緩和されるかをみたものです。その結果、どちらのカシスアントシアニンでも毛様体筋の収縮を緩やかかつ持続的に緩和することが確認されました。このことから、カシスアントシアニンが毛様体筋の収縮を緩和させ、目のコリを和らげる作用があることが明らかになったのです。
【カシスと主な果物の抗酸化ビタミン含有量】(100gあたり)
ビタミンC |
ビタミンE |
|
---|---|---|
カシス |
181mg |
1.0mg |
ブルーベリー |
9mg |
1.7mg |
いちご |
62mg |
0.4mg |
オレンジ |
60mg |
0.3mg |
カシスに含まれる抗酸化ビタミンについてみてみると、ビタミンCが他の果物に比べて格段に多いことがわかります。同じくアントシアニンを含み目の健康に役立つとされているブルーベリーと比較すると、その量はなんと20倍!しかし、ビタミンEについてはブルーベリーのほうが多く含んでいるようです。
このように、アントシアニンに加え、抗酸化ビタミンも多く含むカシスは、抗酸化力が高い食品といえるため、緑内障進行の原因ともなる酸化ストレスの抑制に役立つことが期待できるかもしれません。
カシスには4種類のアントシアニンが含まれており、そのうち2種類がカシス特有の成分とされています。
それの1つが「シアニジン-3-ルチノシド」と「シアニジン-3-グルコシド」です。この2つの成分は、筋肉の緊張を和らげ、血流を改善することで眼圧の上昇を防ぎ、緑内障の進行を抑制することがわかっています。
緑内障100人のうちカシスを食べている人は8人でした。その8人の直近1年間の眼圧変化を調査したところ、眼圧が上がった人と眼圧を維持している人が同じく4名、眼圧が下がった人は0名でした。
(※2020年3月に株式会社アスマークにてインターネット調査)
カシスだけによる影響とは言えませんが、今回調査した100人の中ではカシスで眼圧を低下できた人はいなかったことになります。カシス以外での対策も取り入れるのが望ましいです。
ブルーベリー |
|
---|---|
アサイベリー |
|
カシス |
|
植物学的な違いの他に、成分にも違いが見られます。
シアニジン-3-グルコシド |
シアニジン-3-ルチノシド |
|
---|---|---|
カシス |
1.27mg |
8.24mg |
アサイベリー |
11.8mg |
22.3mg |
ブルーベリー |
0.03mg |
微量 |
シアニジンの含有量は、カシスよりアサイベリーの方が多いことが分かります。目への働きを期待するなら、アサイベリーも積極的に摂取してみましょう。
カシスとブルーベリーの大きな違いは、アントシアニンの含有量です。カシスの原産国として有名なニュージーランドの研究所の計測によると、カシスにはブルーベリーの3~4倍のアントシアニンが含まれているとされています。
また、カシス特有のアントシアニンであるシアニジンによる眼精疲労の回復やピントフリーズ現象の軽減などの効果が期待されていることもブルーベリーとの違いといえるでしょう。
カシスとアサイベリーは、どちらも大変豊富なアントシアニンを含んでいますが、その組成に大きな違いがあるようです。
カシス特有のアントシアニンとして知られているシアニジン-3-ルチノシドですが、実はアサイベリーにも含まれており、しかもその含有量はカシスを上回ることが計測によって明らかにされています。
また、アサイベリーはもう1種類のシアニジンであるシアニジン-3-グルコシドも豊富に含んでいるようです。
カシスは生食用の品種もあり、食べられないことはないのですが、独特のえぐみなど日本人の嗜好にはなじみのないクセがあるため、日本ではあまり一般的ではないようです。
カシスは、ブルーベリーなどと違って甘味がほとんどなくえぐみもあるため、糖分を加えて加熱しジャムとして利用したり、ドライフルーツにしてお菓子作りの材料として利用したりすることがポピュラーなようです。
目に良い成分を豊富に含んでいるものの生食向きではないカシス。手軽にその成分を摂取するには、サプリメントを利用するのもおすすめです。サプリメントは、通常の食事では補いにくい栄養成分を抽出して作られているため、無駄なくしっかりとカシスの栄養成分を摂取することができます。