最終更新日:2021年5月07日
緑内障や糖尿病性網膜症など、加齢に伴う眼病予防には、抗酸化作用をもつビタミンの摂取も役立ちます。ここでは、目の健康に関わるビタミンとその作用、ビタミンを多く含む食べ物などをご紹介します。
ビタミンとは、健康に生命を維持するために不可欠な微量栄養素のことで、全部で13種類あります。ビタミンは、炭水化物やタンパク質、脂質のようにエネルギー源や体を作る素とはなりませんが、体の様々な機能を正常に維持するには欠かせない物質です。
脂溶性ビタミン(ビタミンA・E・D・E・K)と水溶性ビタミン(ビタミンB群・C)があり、脂溶性ビタミンは大量摂取による過剰症が起こることがあるため、注意が必要とされています。
一方で、水溶性ビタミンは、過剰に摂取しても、体内に蓄積することはなく排泄されてしまうため、毎食一定量を摂取し、不足しないようにする心がけが必要です。
ビタミンB群には、B1、B2、B6、B12、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチンがあります。その中でも特に目の健康に関わっているのがB1、B2、B6です。
緑内障は、眼圧が上昇することで視神経が圧迫され、障害を受けた結果、視野欠損が起こる眼病です。緑内障の予防や進行抑制には、眼圧のコントロールと視神経の保護・強化が大切とされているため、普段の食生活で、ビタミンB群を積極的に摂取することは、緑内障のセルフケアの1つとして有効です。
目は疲労がたまると血行が悪くなり、眼圧が上昇しやすくなりますが、ビタミンB1は、目の疲労を軽減させる働きにより、緑内障悪化の原因となる眼圧の上昇を抑えます。また、視神経の働きを高める作用もあるため、眼圧による傷害を受けにくい視神経にすることで緑内障から目を守るといった効果も期待ができそうです。
ビタミンCは、酸化ストレスから細胞を守る働きをもち、「抗酸化ビタミン」ともよばれています。 ビタミンCは、その強い抗酸化作用で紫外線のダメージから網膜細胞や視神経を守り、緑内障の予防や進行抑制に効果が期待できるでしょう。
ビタミンB群、ビタミンCは、眼圧の高さに関わらず、目の健康全体に不可欠なものであるといえます。緑内障の進行を防ぐために、眼圧のコントロールにに注意することはもちろん大切ですが、眼圧だけではなく、網膜や視神経など目の組織自体をケアし強くすることも眼圧のコントロールと同じくらい意識すると良いでしょう。
「緑内障から目を守る」編集部は緑内障患者100名へアンケートを実施。直近1年間の視野欠損の進行を抑制している人が、最も目に良い成分として認知しているのがアントシアニンだと分かりました。ビタミン類の中では、ビタミンAが12人、ビタミンEが9人、ビタミンB群・Cが6人と票を集めました。
(※2020年3月に株式会社アスマークにてインターネット調査)
視神経症とは、外界からの光情報を脳に伝える働きをする神経線維が、何らかの障害を起こしてしまう病気です。片目または両目の急激な視力低下や、視野の中心が見えない、上または下半分が見えなくなるなどが主な症状で、時に目の痛みや圧迫感を感じることもあります。
目の血液循環障害、事故などによる外傷性、薬剤による中毒性、遺伝性など原因がはっきりしている場合もありますが、特発性といった原因不明な場合も少なくありません。
その他、まれにビタミンB群欠乏による視神経症もあり、その治療にはビタミンB群配合の薬剤を用いた治療も行われる場合があるようです。
※参考:日本眼科学会|視神経症
白内障とは、目のレンズである水晶体が加齢とともに白く濁って視力が低下してしまう病気です。
視界がかすむ、視力の低下、まぶしさ、暗い時と明るい時の見え方が違うなどが主な症状です。
白内障の治療には点眼治療から手術まで多岐にわたり、症状や程度によって治療法は異なります。
また、白内障とビタミンの関係を調査した結果によると、ビタミンCの摂取量が多いほど白内障のリスクが低減することが明らかになっているようです。これは、白内障が加齢による酸化ストレスによって水晶体がダメージを受けることが主な原因であることから、ビタミンCによる強い抗酸化作用で目の組織内の酸化が抑制されたためとされています。
同様に、強い抗酸化力をもつビタミンEについても、水晶体の酸化ストレスダメージの低減につながる可能性があるとされているようです。
糖尿病性網膜症とは、糖尿病の合併症として発症する病気です。高血糖状態が続くことで目の毛細血管がもろく出血しやすくなり、網膜が傷害されてしまいます。
目のかすみなどの症状がありますが、初期段階では無症状のことも多いため気づきにくいのが特徴です。
糖尿病性網膜症の治療薬には、ビタミンEを配合した薬が用いられることがあります。ビタミンEの抗酸化作用、血流改善作用、コレステロール低下作用によって網膜や視神経を保護し、悪化を防ぐ治療薬として用いられているようです。
ビタミンAは、目が光を感じ取る際に必要なロドプシンという色素成分の原料として欠かせないビタミンです。
ロドプシンは、暗い場所の微量の光にも反応し分解され、脳に光の刺激を伝えます。その後、再合成されるのですが、十分なビタミンAがないと再合成がスムーズに行われず、ロドプシンが減少、暗い場所での光刺激に反応しにくくなり、暗がりでの視力が低下する「夜盲症」を引き起こす場合があります。
※参考:B群ビタミン欠乏による皮膚変化
緑内障に限らず、白内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、飛蚊症、眼精疲労、ドライアイ、老眼…加齢とともに様々な眼病のリスクが高まります。
眼病は初期症状が出にくいものも多いため、油断は禁物です。定期的な眼科検診とあわせて、毎日の食生活から目に良いビタミンを意識的に摂取するなどの積極的なセルフケアをこころがけましょう。
レバーは、ビタミンAの代表格ともいえる食べ物です。豚レバーであればほんの10g程度の量で、1日に必要なビタミンAを摂取することができます。脂溶性のビタミンであるため、過剰摂取には注意が必要です。
鶏レバーにはビタミンB1、牛レバーにはビタミンEが多く含まれており、抗酸化作用が期待できます。
炒め物や焼き鳥、レバーペーストなどがおすすめです。
モロヘイヤは、摂取すると体内でビタミンAに変わるβ-カロテンを多く含む食べ物です。ビタミンAと違い、β-カロテンは、体内での必要量に応じてビタミンAに変わるため、過剰症の心配はありません。100g程で1日に必要なビタミンAを摂取することができます。
ビタミンB群、C、Eの他、カルシウムやカリウム、食物繊維も豊富に含まれているのが特徴。クセがないのでお浸しなどにして食べるのがおすすめです。
うなぎのかば焼きには、ビタミンA・B・D・Eなどのビタミンをはじめ、DHA、コラーゲンなど、たくさんの栄養素が含まれています。とくに、目の健康に欠かせないビタミンAは100g当たり1500μg含まれています。これは、かば焼一人前で1日の必要量を満たすことができるほど豊富な量です。
ビタミンAは油と一緒に食べると吸収率が上がることが知られていますので、うなぎの脂との相性も抜群です。うなぎのかば焼きを「土用の丑の日」のスタミナ食としてだけでなく、目に良い食材として食べる機会をつくってみるのも良いですね。
βカロチンには抗酸化作用があります。また、必要に応じて体内でビタミンAに変わることもできる優れた成分です。昔から「にんじんは目に良い」と言われるのは、こういった理由によるものでしょう。
ビタミンAだけでなくβカロチンも油に溶けるビタミンなので、軽く油で炒めるきんぴらやバターソテーなどで食べられるのがおすすめです。
春菊は抗酸化作用を持ち、体内でビタミンAに変化するβカロテンが豊富に含まれています。具体的な含有量は、100gあたり3,400μg。さらに、ビタミンCやビタミンK、鉄分やカルシウムといったミネラルも豊富に含む、栄養たっぷりの食材です。
新鮮で美味しい春菊を食べるには、緑色が鮮やかで、全体にみずみずしい張りがあるものを選ぶのがコツ。茎が太いものは葉が固く食べにくい傾向にあるため、太すぎない茎のものを購入するとよいでしょう。
通年手に入りやすい小松菜も、体内でビタミンAに代わるβカロテンを多く含む食材です。また、ビタミンCやビタミンE、カルシウム、鉄分といった栄養も豊富。味わいにクセがなく食べやすいうえ、一年を通して比較的安価に入手できるのも嬉しいところです。
βカロテンを効率よく摂取するには、油を使う方法で調理するのがおすすめ。豚肉や卵などと一緒に炒めれば、ビタミンたっぷりのメイン料理として楽しめます。
豚肉はビタミンB1の宝庫ともいわれるほどで、200g程で1日に必要なビタミンB1を摂取することができます。その含有量は牛肉の8~10倍です。
ビタミンB群の一種で、緑内障を予防する可能性があるとの論文が発表されているナイアシンも多く含まれています。
豚肉は比較的日常的に摂取することが多い食べ物なので、脂身の少ない部位を選ぶ、油を使わないで調理するなど、脂肪分に気を付けて意識的に摂るようにするとよいでしょう。
ウナギの中でも、特に蒲焼はビタミンB1を豊富に含む食べ物です。1匹(200g)程で1日に必要なビタミンB1を摂取できます。
ウナギはDHAやEPAといった不飽和脂肪酸も豊富。これらには網膜の機能改善などの効果が期待されており、1日に2g程の摂取が目安です。ウナギは100g程でDHA・EPAの必要量を摂取することができます。
毎日ウナギとはいきませんが、外食の際などに選んでみるのも良いでしょう。
大豆には、ビタミンB1を含むビタミンB群がたっぷり含まれています。また、高い抗酸化作用で知られるビタミンEの一種「γ-トコフェロール」や、目の機能を正常に維持する役割を担うといわれるカルシウムも豊富です。
ビタミンB1の含有量は豚肉やウナギに及びませんが、大豆には「手軽に食べられる加工製品が豊富」「悪玉コレステロールを下げる多価不飽和脂肪酸が多い」といった嬉しいメリットも。日々の献立の「もう一品」として、ぜひ取り入れたい食材です。
ビタミンB2は、肉類、魚介類、乳製品、大豆製品など様々な食べ物に含まれているので、バランスの良い食事を心掛けることで、必要量を摂取することができます。
納豆には、1パックあたり0.28mgのビタミンB2が含まれており、これは1日の1/4程の量です。
ビタミンB2は、納豆のように調理しなくても手軽に摂取できるものが多いので、日常の食事で必要量を摂取しやすいでしょう。
ただし納豆は、ワーファリンを服用している場合には、薬の作用を害してしまう可能性があるので控えるようにしてください。
牛乳は、コップ1杯で1日の1/4程のビタミンB2を摂取することができます。
牛乳には、ビタミンB2以外にも、カルシウムが豊富です。カルシウムは、神経の働きをサポートする働きがあるため、目の健康にも役立つと考えられます。
コップ1杯を習慣化するのが最も手軽な牛乳摂取法ですが、料理やコーヒー、紅茶に加えて摂取してもよいでしょう。
幅広い栄養を豊富に含むことから、完全栄養食とも呼ばれる卵。目の炎症を改善したり、視神経の働きを高めたりする作用があるといわれているビタミンB2は、白身の部分に多く含まれています。
ビタミンB2などの栄養を効率よく摂取するなら、鶏卵ではなくうずらの卵を食べるのもおすすめ。うずらの卵には、鶏卵と比較してビタミンB群、ビタミンA、DHAといった目に嬉しい栄養がより豊富に含まれているのです。
ビタミンAに加え、ビタミンB2も豊富に含むレバー。豚レバーの場合、50g程度で一日に必要なビタミンB2をすべてまかなうことが可能です。そのほか、ビタミンB6やB12、鉄分、葉酸なども豊富。まさに、栄養の宝庫たる食材であると言えるでしょう。
ただし、毎日のようにレバーを食べるのはおすすめできません。レバーには体内で蓄積される脂溶性ビタミンであるビタミンAが豊富に含まれているため、食べ続けると過剰摂取による中毒症状を引き起こす恐れがあるのです。
レバーを食べる頻度は、多くても週に1回程度が目安。日頃は他の食材で栄養を摂り、時折楽しむ程度に留めるとよいでしょう。
大豆に含まれるビタミンB6は、100gで1日の1/3程の含有量ですが、加熱調理や加工すると大幅に少なくなってしまいます。
より無駄なく大豆のビタミンB6を摂取するには、炒り豆などがおすすめです。また、一度に食べる量は少なくなりますが、きな粉として摂取するのもよいでしょう。
大豆には、ビタミンB1、ナイアシンの他、カリウムやマグネシウムなどのミネラル類も多く含まれており、目の健康に役立つ食べ物といえます。
果実の中でも、とくにビタミンB6を豊富に含むのがバナナです。成人女性の場合、バナナ1本を食べることで1日に必要な量の1/3のビタミンB6を摂取することができます。そのまま生で食べられるため、水溶性ビタミンであるビタミンB6を逃さずしっかり摂取できる点もポイント。
また、バナナには、余分な塩分の排出を助けてくれるカリウムや、抗酸化作用を持つポリフェノールといった栄養も豊富に含まれています。朝食の一品や小腹満たしとして、積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。
ビタミンCは柑橘類をはじめとした果実類に多く含まれている栄養素です。イチゴは柑橘類ではないものの、ビタミンCが豊富で、100gで1日必要量の2/3程が摂取できます。
また、目に良いとされるアントシアニンも含んでいるため、抗酸化作用が高い食べ物といえるでしょう。食後のデザートなどに取り入れるとよいかもしれません。
鮮やかな色合いで食卓に華やぎを添えてくれる赤パプリカは、数ある野菜の中でもトップクラスのビタミンC含有量を誇る食材です。1/2個を食べるだけで、1日に必要なビタミンCを摂取することが可能だといわれているほか、「他の野菜に比べ、加熱してもビタミンCが失われにくい」という特徴も。
なお、パプリカは色によって栄養価が異なります。ビタミンCを効率よく摂取したい場合は、黄色やオレンジよりも赤のパプリカを選びましょう。赤パプリカにはビタミンCのほか、体内でビタミンAに代わるβカロテンも豊富です。
【ブルーベリーに含まれるビタミン含有量】
ビタミンB1 | 0.03mg |
---|---|
ビタミンB2 | 0.03mg |
ビタミンB6 | 0.05mg |
ビタミンA | 5μgRE |
ビタミンC | 9mg |
ビタミンE | 1.7mg |
目に良いといわれているブルーベリーには、ビタミンA、ビタミンB群はさほど多くは含まれていません。アントシアニンの他に目の健康に役立つ栄養素としては、ビタミンCが100gあたり9mgで1日必要量の1/10程、ビタミンEは100gあたり1.7mgで1日必要量の1/3程となります。
ただし、この含有量は「100gあたり」であるため、実際に毎日続けて摂取するには量的に難しいかもしれません。
目の健康に役立つビタミンを紹介してきましたが、実はこの他にも目の健康に役立つビタミンをたっぷり含む食べ物があります。
それが「アサイベリー」です。アサイベリーはブラジルの熱帯雨林に自生する植物の果実で、その栄養価の高さから「天然のサプリメント」とも呼ばれています。
アサイベリーに含まれるビタミンのうち、特に目の健康に関わるビタミンCとEの含有量をみてみると、ビタミンCはレモン100mgに対し、アサイベリーは288mgなので約2.8倍、ビタミンEはアーモンドが31.4mgに対してアントシアニンが45mgで約1.5倍。
抗酸化作用の高いビタミンCとEがたっぷりのアサイベリーは、目の健康習慣としておすすめです。
【監修】医学博士 薬剤師:大熊哲汪先生
1969年昭和薬科大学薬学部卒業。同大学助手、北信総合病院腫瘍研究施設研究員、株式会社ツムラ分子遺伝学研究所研究部長を歴任。植物由来の成分における制癌作用および免疫研究、生体内酸化ストレスの研究に従事。